雨からの物語

心が鏡にうつる詩集

モンキチョウ

シェードを上げてベランダに出るドアを開ける

空気と一緒にカーテンが舞って車のクラクションや走る音が大きく聞こえる

でもそれがうるさいというよりは静寂をやわらげてくれてる感じで助かる

なかなか整理できない気持ちがあった

いろいろあったと思う

今となっては

手紙を書いてくれた

拙い文章でもありがたい

最後に素直になれたような気がする

文字通りに一歩先を行かれたと思う

アカデミー賞を受賞した舞台で女優が抱き合うみたいに賞賛したい気持ち

ありがとう

それ以外に何が言えるだろう

思い出せることは山ほどある

でも今はやめておこうと思う

ベランダのドアを閉めると一気に沈黙が降りてくる

しばらく部屋の中を眺めていろいろなものに手を触れる

何かの儀式みたいに両手を重ねて胸に当てる

息を深く吸い込むと空気の乾いた匂いがする

季節はちょうど秋に変わる頃だ

何処かからピアノの音が聞こえる

誰かが練習しているのかもしれない

私達の幼い頃のように

蝶々が空を舞う

黄色いカワイイものを運ぶみたいに

頑張れと小さく呟く

決心したように玄関に向かう

繰り返すピアノの中でカツカツと靴の音をたてながら季節はまた進み始める

ハイキング

丘を登るとようやく家が見えてくる

しばらく立ち止まって息を整える

辺りを見回すと素晴らしい景色で息を呑む

ここまで来た甲斐があった

高鳴る心臓の鼓動と切れる息の音が体に染み渡る

視線の先に家が見える

ささやかな小さな家だけどログハウス風の温かみを感じる家だ

友達がテラスまで出て待ち構えている

全身でジャンプしながら目一杯に手を振っている

そこまでの距離の間が少し照れる

気まずくはない、久しぶりの再会だ

笑顔

こんなに自然に笑えるとは知らなかった

俺達が西欧人なら抱き合ってキスでもしたかもしれない

「よく来たな」

この労いの言葉がよそよそしい、でもうれしい

とりあえずはこれでいいんだ

まずは荷物を降ろさせてくれ、その間にお茶の準備でも

友達はわかっているとでも言うような背中を向けて一旦キッチンへ引っ込む

俺はソファーに座って一つため息をついてみる

積もる話は山ほどある

こんな景色だ

俺は声を上げて笑った

その声を聞いて友達はこっちを覗きこんで笑っている

部屋の中を見渡す

初めて来た場所でも俺の心は一つだ

ドッシリと待ち構える

さあ話を始めよう

本当に積もる話が山ほどあるんだから