雨からの物語

心が鏡にうつる詩集

ジュークボックスの謎

バーに入ると客は少ない

狙い通りだ

カウンターの端に座ってしばらく店内を見回す

全面板張りで出来ていて店に入ると一瞬足を取られたような感覚になる

奥の方にはジュークボックスがあって派手な電飾で光っている

少し興味があってジュークボックスに近付きたいと思うけどそのうちにマスターが気付いて注文を取りに来る

ビールを注文する

日が暮れるにはまだ早い時間で西日が眩しく店内に差し込んでいる

ビリヤードの台もあって何人かの男が真剣に遊んでいる

スラっとしたジーパンにダンガリーシャツを着て髭を生やしている男がその中では最も様になっている

ビールをチビチビと飲む

その時偶然マスターと目が合ったのでジュークボックスを試してもいいか聞いてみる

お好きにどうぞと言うのでビールを一気に飲んで立ち上がる

その瞬間ちょっとよろけたようになったのは酔ったからじゃなくて板張りの床にまだ慣れていないからだ

子供の頃に学校の音楽室にこういう板張りのステージみたいなのがあってその時にもこういうギャップを感じたような気がする

ジュークボックスに近づくまでの距離を何故か気恥ずかしい感じで静かに歩く

全体を見回してみると百円玉を入れる所があるのでそこにコインを入れて適当にボタンを押した

するとレコードがカタカタと音を立てて入れ替わって回り始めて音楽が流れ出す

聴いたことがない音楽でジャズっぽい古い感じがしてなかなかいい

しばらく聴いているとさっきビリヤードをしていたジーパンにダンガリーシャツの髭を生やした男が近付いて来る

その男は僕の目の前で止まってニヤッと笑いながら靴で床を鳴らし始めてそれでリズムを取りながら曲に合わせて踊り始めた

その様子に店内は盛り上がり拍手まで起こって僕にも踊れと煽りだす

僕はその雰囲気に遅れると負けだと思って男の動きを真似して踊った

それでさらに拍手が起こり店内は盛り上がってマスターも笑っていたので僕はウインクで合図を送りこういう事だったのかと納得して踊り続ける