雨からの物語

心が鏡にうつる詩集

100円玉の行方

病院を歩いている

フロア内は赤い絨毯が敷かれている

踏む感覚に柔らかさはなくて薄いものなのがわかる

相変わらずいつも人が多くて何処からともなく微かにオルゴールの音楽が聞こえる

ポケットに手を入れて伏し目がちに歩いていると目線の先に100円玉が落ちていた

これはと思って拾おうかどうか迷う

これだけ周りに人がいれば拾いにくい

それでも構わず拾うことに決める

できるだけ周りにさとられないようにしたい

スピードを落として足音をひそめるようにして歩く

気持ちを落ち着かせて歩幅を合わせる

止まらず流れの中でかがみながら腕を伸ばして指先で掴む

ここで一気に周りの視線が気になる

体が少しこわばっているような緊張感がある

構わない俺は俺だ

素早く自然に体勢を戻す

それで何事もなかったように前に歩き出す

これはまさに案ずるより産むが易しという感じだった

たかが100円玉一つだ

そこで一つの達成感を得た俺は一気に醒めた気持ちになる

結局これを捨てることに決めて指の上で100円玉を弾いて飛ばして天井に張り付いている忍者にくれてやった